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X線漏えい線量測定とは?
X線室の漏えいは人体への被ばくに直結することから、漏えい線量測定は安全管理に重要です。
法令で定められているから行うだけではなく、スタッフの方々や患者様への安心の提供のためにも、定期的に実施する必要があります。
サーベイメータとバッジ法の違いは?
漏えい線量測定には2種類に分けられます。
サーベイメータ法 | バッジ法 | |
測定方法 | 技術者が訪問します。 実際に撮影している条件下でX線を複数回曝射し、その時の数値を読み取ります。 | バッジが送られてきます。 ご施設のスタッフ様によって、各面に貼り付けを行います。 |
メリット | 任意の個所を測ることができます。 特に漏えいが多く検出される扉部分、窓部分、鉛シールド部分などを重点的に測定ができます。 | 他社とあまり関わらずに実施が可能です。 |
デメリット | 図面のご確認、訪問日の打ち合わせ等のやり取りが必要です。 | ドアの開閉部分等、動きのある個所の測定ができません。 屋外、隣接する部屋など、貼り付けが難しい個所もあります。 |
サーベイメータ法での測定方法には2種類の方法があります。
「線量率」とは、1時間当たりの放射線量(Sv/h)を測定します。「積算線量」とは、一定時間積算した放射線量(Sv)を測定します。
どちらで測定するかは、X線の強度・時間・使用可能なサーベイメータの測定範囲・時定数・応答時間などを考慮して決定します。
線量率モードによる測定の対象:透視撮影
積算線量モードによる測定の対象:一般撮影、乳房撮影、CT撮影、歯科用X線装置
測定に必要な資格は?
法令上、測定を行うための資格等の明確な規定はありません。とはいえ、専門的な知識を要することが多く、診療放射線技師、エックス線作業主任者、放射線取扱主任者、漏えいX線量測定士、作業環境測定士など、エックス線に関する専門的な知識を有する者が行うことが望ましいとされています。
弊社には、診療放射線技師、エックス線作業主任者、漏えいX線量測定士が在籍しております。
なお、労働安全衛生法第2条では「作業環境測定」について定義されています。 同法第3条には「5つの指定作業場については、作業環境測定士または作業環境測定機関に測定させる。」となっています。放射線業務を行う作業場のうち、ロ.放射性物質取扱作業室 ハ.事故由来廃棄物等取扱施設については、これらに指定されていますが、イ.放射線業務を行う管理区域については指定されておらず、作業環境測定士でなくて良いとされています。
測定は任意?
いいえ。義務です。
以下の法律で制定されています。
・医療法施行規則第30条の21(X線装置等の測定)
病院又は診療所の管理者は、治療用エックス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置及び診療用放射線照射装置について、その放射線量を六月を超えない期間ごとに一回以上線量計で測定し、その結果に関する記録を五年間保存しなければならない。
・医療法施行規則第30条の22(放射線障害が発生する恐れのある場所の測定))
病院又は診療所の管理者は、放射線障害の発生するおそれのある場所について、診療を開始する前に一回及び診療を開始した後にあつては一月を超えない期間ごとに一回(第一号に掲げる測定にあつては六月を超えない期間ごとに一回、第二号に掲げる測定にあつては排水し、又は排気する都度(連続して排水し、又は排気する場合は、連続して))放射線の量及び放射性同位元素による汚染の状況を測定し、その結果に関する記録を五年間保存しなければならない。
一 エックス線装置、診療用高エネルギー放射線発生装置、診療用粒子線照射装置、診療用放射線照射装置又は放射性同位元素装備診療機器を固定して取り扱う場合であつて、取扱いの方法及びしやへい壁その他しやへい物の位置が一定している場合におけるエックス線診療室、診療用高エネルギー放射線発生装置使用室、診療用粒子線照射装置使用室、診療用放射線照射装置使用室、放射性同位元素装備診療機器使用室、管理区域の境界、病院又は診療所内の人が居住する区域及び病院又は診療所の敷地の境界における放射線の量の測定
・獣医療法施行規則第18条(エックス線診療室等の測定)
ア 次に掲げる場所について、診療を開始する前に1回エックス線の量を測定すること。
①エックス線診療室
②管理区域の境界
③診療施設の敷地内の人が居住する区域
④診療施設の敷地の境界
イ アに掲げる場所について、診療を開始した後に、1月を超えない期間ごとに1回(エックス線装置を固定して使用する場合であって使用する方法及び遮へい物の位置が一定しているときは、6月を超えない期間ごとに1回)エックス線の量を測定すること。
ウ 測定の結果に関する記録を5年間保存すること。
・電離放射線障害防止規則第53条(作業環境測定を行うべき作業場)
令第二十一条第六号の厚生労働省令で定める作業場は、次のとおりとする。
一 放射線業務を行う作業場のうち管理区域に該当する部分
二 放射性物質取扱作業室
二の二 事故由来廃棄物等取扱施設
三 令別表第二第七号に掲げる業務を行う作業場
・電離放射線障害防止規則第54条(線量当量率等の測定等)
事業者は、前条第一号の管理区域について、一月以内(放射線装置を固定して使用する場合において使用の方法及び遮蔽物の位置が一定しているとき、又は三・七ギガベクレル以下の放射性物質を装備している機器を使用するときは、六月以内)ごとに一回、定期に、外部放射線による線量当量率又は線量当量を放射線測定器を用いて測定し、その都度、次の事項を記録し、これを五年間保存しなければならない。
診療放射線業務の注意点
ポジショニングも撮影業務?
診療放射線技師法第24条には「医師、歯科医師又は診療放射線技師でなければ、第2条第2項に規定する業(放射線の人体に対する照射(撮影を含み、照射機器を人体内に挿入して行うものを除く))をしてはならない。」と規定されています。
この「照射、撮影」に、「患者さんのポジショニング」も含むのでしょうか?
2013年11月には兵庫県神戸市のクリニックの院長らが診療放射線技師法違反で逮捕されています。この際「X線撮影時の患者ポジショニングおよび撮影装置のセッティングについても撮影行為の一部である」とされています。その後5年間の保険医の登録の取り消しと、保健医療機関の指定の取り消し処分を受けています。無資格者がポジショニングし、医師が確認することなく曝射することは法令に触れると判断されることがあります。 ご注意ください。